『同志社大学ビジネススクール 伝統産業グローバル革新塾』2006-08年版,同志社大学大学院ビジネス研究科 伝統産業グローバル革新塾事務局発行, pp. 9-10.より引用

ロレアル、シャネル、カルティエなど、ヨーロッパの超一流ブランドが行なう京都発のイベントを次々とプロデュース、京都文化が持つ「お客様をもてなす心」を最大限に活用したビジネスを創造し、内外から高い評価を得ている。

1985年には筑波エキスポにてイタリア大使館のイタリアンナショナルディをプロデュース、世界歴史都市博覧会ディレクター等の文化コラボレーションを行う。京都府とはトスカーナとの提携事業のディレクションなど数々のプロジェクトを実施した。

 京都の室町で生まれ育つ。実家は西陣織のネクタイ製造などの繊維関係の仕事をしていたが、アートの世界に大きな興味を持ち、 大学卒業後スイス、チューリッヒのKunstgewerbe Schule in Zürichに留学する。ここで彼女は、文化人のサロン的な雰囲気や文化の支援活動にふれ、またアートがビジネスになる現場も体験するにいたる。その後、ドイツやイタリアでアートや文化に関わるさまざまな経験を積む一方、京都の伝統文化のもつ素晴らしさにも目覚めてゆく。このような内外の豊富な経験をベースにして、京都を舞台にしたアートプロデュースの仕事を始める。

 室町で育ったこともあり、 京都のもてなしの仕方には小さい頃から慣れ親しんできた。よく祖父がその後移り住んだ嵯峨野の家でお茶会を開いており、これを経験をもって記憶しているという。もてなしのためには季節によりどのようなしつらえをすれば良いかがわかるし、京都育ちであるため「そのような世界に自然に入ってゆける」ともいう。そしてこのような京都の内側で隠れてやっていた楽しみや遊びを、「もてなし」として外に向かってすれば面白いことができるのではないかと感じ始めた。

 プロデュースした仕事に「和の色ルージュ」発表会がある。これはフランスのシャネルが、ルージュの日本限定色を雑誌の編集者などに披露するために開いたイベントで、内外から100人以上の関係者が京都に集まった。一連のイベントは日本の「赤」をテーマに展開され、ルージュの展示会だけでなく、 京都の町屋のなかでの講演会、加えて日本最古の公家住宅である冷泉家のなかで赤を基調にしたしつらえを作り、冷泉家による「和歌の中の赤」に関する講演などを企画した。また、京都を代表する料亭、瓢亭でのお茶会も開かれた。

 このような「もてなし」を、京都人は自分からは積極的に外に向かって広げようとしてこなったことを武智は指摘する。京都人独特の「京都には本当にいいものがあるが、これは京都で京都人が楽しめばいい」といった感覚である。 このため、京都の文化を生かした仕事の依頼が、京都自身からは出てこない状態にあるという。 これは京都にとっては大きな損失であろう。 「もてなし」を有効に使った、京都文化の海外への「横広げ」は、京都の活性化にとどまらず、京都の国際社会での存在感、ひいては日本のソフトパワーにも直結してくる。 新たな芽が、一人のアートプロデューサーの活躍から出てきたことは、京都の文化力を国際社会に向かって「横広げ」する意味から、注目に値すると出来事といえよう。